但馬の魅力
「山陰海岸ジオパーク」はじめ豊かな観光資源
兵庫県北部に位置する但馬は、豊岡市、養父市、朝来市、香美町、新温泉町の3市2町で構成され、県全体の面積の約4分の1を占めています。豊かな自然に囲まれた但馬地域は観光資源にも恵まれ、スキー場、海水浴場のほか日本遺産の認定を受け、「鉱石の道」「北前船」「麒麟獅子」が注目を集めています。
「山陰海岸ジオパーク」は2 0 1 0 年1 0 月、地質や地形に表れる地球の歴史を学び、楽しむ地域を振興する世界ジオパークネットワークへの加盟( 国内4 カ所目)が認定されました。山陰海岸ジオパークは京丹後市の東端から鳥取市の西端までの東西約1 2 0 ㎞ の範囲に広がるエリアで、但馬地域では豊岡市・香美町・新温泉町が含まれます。
日本の近代化をけん引してきた、生野鉱山、神子畑鉱山、明延鉱山、中瀬鉱山をつなぐ「鉱石の道」と、姫路港と生野鉱山をつないだ「銀の馬車道」が、2017年に、日本海・瀬戸内沿岸を巡る北前船のかつての寄港地のひとつであった「諸寄」が2018年に、さらには香美・新温泉町「麒麟獅子」が2019年に日本遺産に認定され、地域の新たな魅力づくりに向けた取り組みが行われています。
1300年の歴史を持ち、7つの外湯につながる大谿川沿いに風情のある温泉街を形成する「城崎温泉」、98度の高温かつ豊富な湯量を生かし、調理や洗濯など、古くから温泉を生活に利用してきた歴史を持つ「湯村温泉」、江戸時代には城下町として栄え、今なお当時の街並みが残されている出石周辺など自然と歴史が感じられる観光資源も多くあります。
さらに、神戸ビーフの素牛である但馬牛、ズワイガニをはじめ食材豊かな土地でもあります。世界の舌を魅了する但馬牛の優れた血統を確立・堅持してきた飼養システムの重要性を後世に伝えるための取り組みも進んでいます。
子どものころから舞台芸術に触れる機会を
豊かな食資源を生かした食品産業、温泉などの観光業が盛んな但馬には、多くの地場産業も根付いています。その一つが「豊岡鞄」です。大手かばんメーカーの下請けとして発展を遂げてきましたが、2006年に地域団体商標「豊岡鞄」を取得し近年は独自ブランドを発信する企業も増えています。2014年には産地のオリジナルバッグを扱うショップや鞄職人の育成学校(アルチザンスクール)を併設した「Toyooka KABAN Artisan Avenue」が開設しました。2 0 1 8年には東京に地域ブランド「豊岡鞄」を販売する「K I T T E丸の内店」がオープンし、豊岡鞄ブランドのさらなる向上が期待されています。
また、2014年、演劇やダンスなどの舞台芸術に特化した滞在型の創造活動の場として城崎国際アートセンターがオープンしました。毎年国内外の選ばれたアーティストが滞在し、その創作過程を地域の方々に公開したり、市内小・中学校でのワークショップを実施するなどして、市民が一流のアーティストと交流する機会を積極的に設けています。
コウノトリの野生復帰を環境教育に生かす
コウノトリ野生復帰の取り組みが全国的にも注目を集めています。かつては日本各地に生息していたコウノトリ。1971年には日本でその姿が見られなくなってしまいました。最後の生息地であった豊岡でコウノトリ野生復帰の取り組みが始まり、人工飼育開始から25年目、ついにコウノトリのヒナが誕生。2005年に野生復帰に向けた試験放鳥がスタートし、現在200羽を超えるコウノトリが自然界で羽を広げるまでになっています。
豊岡市では、安全・安心な農作物を生産するため「コウノトリ育む農法」に取り組むほか、生きもの調査や、湿地・ビオトープの設置を通じた環境教育に力を入れています。また「コウノトリ育む農法」でつくられた農作物をブランド化し観光振興にもつなげ、これまでは相反すると考えられていた環境と経済を共に発展させる「豊岡市環境経済戦略」を推進しています。現在、「コウノトリ育む農法」は、但馬全域に広がっています。
特区制度を活用した中山間地域の活性化
養父市では2014年5月、中山間地域農業における改革拠点として国家戦略特区の指定を受けました。これを受け、高齢化の進展や耕作放棄地の増大などの課題を抱える中山間地域において、民間事業者と連携した取り組みによる耕作放棄地の再生、加工により農産物の価値を高めることで収益を生み出せる農業の実践など、全国の中山間地域農業のモデルを目指した取り組みが進められています。
農業以外にも、オンライン医療や自家用車を活用した有償運送など、地域経済の活性化や地域創生に取り組んでいます。
命をつなぎとめるドクターヘリ
但馬地域では医師不足が心配されているところですが、公立豊岡病院の救命救急センターが中心となってドクターヘリを活用して救命率の向上につなげ、全国から注目を集めています。
交通ネットワークの整備が進む
東西、南北軸の高規格幹線道路の整備が進んでいます。京阪神都市圏とを結ぶ道路として整備中の北近畿豊岡自動車道路は、昨年、但馬空港ICまで延伸されました。鳥取から宮津までを結ぶ山陰近畿自動車道は、2017年に新温泉浜坂IC―余部IC間(浜坂道路)が開通しました。また、「コウノトリ但馬空港」は、羽田空港まで伊丹空港乗り継ぎで最短で約2時間半で行くことができ、2018年5月には新型機が導入されました。今後、交通ネットワークの整備によりアクセスが良くなることで、国内外から但馬にますます多くの人を呼び込むことになりそうです。
『高校生のための企業研究ガイド2021 兵庫県の企業 但馬版』(神戸新聞社、2021年)